東ティモール立法能力向上研修

3月2日から東ティモール司法省で法案起草業務を担当している職員2名を招聘して研修をやっています。もっとも、私はアテンド役で、講師は法学研究科や、市役所・法務省などの方に頼んでいるわけですが。

法学教育を受けた人材や実務経験がある人材が非常に限られている東ティモールでは、彼らの責任はとても重大なわけで、そのやる気はひしひしと伝わってきます。以前、東ティモールで裁判官の友人と話をしたときも、裁判官職務に対する熱意に圧倒されました。何というか、インドネシアで会う、良くも悪くも肩の力が抜けた裁判官達とはかなり肌合いが違います。

ただ、いかんせん知識と経験の不足は否めない。あと、言語。日本人には想像しにくいのだけど、国語となったポルトガル語を話せる人は、司法省(法律はすべてポルトガル語で書かれる)でさえ4分の1程度、公務員全体では10分の一くらい。東ティモール内ではかなり共通語としての地位を有しているテトゥン語は、行政用語としては語彙が十分でないとされて(要するに方言の域を出ないと判断されて)、公用文書用語とはされなかった。しかし、子供と元亡命組をのぞけば、ほとんどの人が話せるインドネシア語は政治的には公用語としては受け入れにくかった。

ほとんどすべての国民が国語を一から勉強しなければいけないという状況で、じゃあ、研修は何語でやればいいんだという壁にぶつかってしまうわけです。今回は通訳の都合もあって、インドネシア語で押し切ることにしたけど、実のところ9年以上公用語としてのインドネシア語から離れていた彼らは、最初のうちインドネシア語を思い出すのに時間がかかっていたらしい(急に饒舌になった理由を聞いたらそういっていた)。

裁判官も検察官も、当事者も十分には理解できないポルトガル語で法の運用をしなければいけない状況は、研修にきた彼らも十分にわかっているようだった。法律の言葉がわからなければ、法律を守ろうという意識も育ちにくいだろうし、そもそも守ろうにも中身がわからない・・・。

母語と国語が一致することを日本は誇るべきだという言葉にも妙に説得力があったし(もちろん、日本の現状に照らせば、それを日本人が言うことは問題が多すぎるけど、彼らから見ればそういうことなんだろう)。

さて、あと、10日ばかり研修は続くけど、その成果やいかに。

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