島田 弦 SHIMADA Yuzuru [English]
現職:名古屋大学大学院・国際開発研究科・教授
Professor, Graduate School of International Development, Nagoya University
担当授業:「法と開発」「アジアの法と社会」
研究分野:インドネシア法、法と開発、アジア法、平和構築と法、災害と法
Research subjects: Indonesian law, Law and Society in Asia, Law and Development, Law and Peace-building, Law and Disaster
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研究
インドネシアを中心とした「アジア法に関する研究」と、法と社会経済政治発展の関係について考える「法と開発」を中心に研究しています。
現在取り組んでいる研究テーマは、(1)インドネシアにおけるポスト権威主義憲法体制、(2)アジア各国法、特にインドネシア法の歴史(法の移植)、(3)大規模災害 における法の役割、(3)インドネシアを中心とするアジア諸国の憲法裁判所、についてです。
編著書:
『アジア法整備支援叢書・インドネシア:民主化とグローバリゼーションへの挑戦』2020年6月、旬報社(7000円+税)。(出版社リンク)
『アジア法整備支援叢書・多様な法世界における法整備支援』2021年4月、旬報社(8000円+税)。(出版社リンク)
研究プロジェクト1:法の移植-インドネシア法形成過程における外国法理論の影響について
法整備支援(法分野における国際協力)の基本的な手法は、ある国における法制度をモデルとして、別の国・地域に移植することです。この研究で は、この法分野での国際協力(法整備支援)に関する研究において注目されている「法の移植legal transplant」論をアジア法研究へ適用し、アジア地域諸国における法の発展過程の特質およびメカニズムを明らかにすることを目的としています。と りわけ、本研究においては、インドネシアを対象地域として選択し、インドネシア法の形成・発展過程において、旧宗主国であるオランダを中心とする諸外国の 法学理論の移植が与えた影響を解明します。
現在、この研究は科学研究費補助金・若手研究(B)の助成を受けて実施しています(研究題目「『法の移植』論のアジア法への応用:インドネシア法へのオ ランダ法学理論の影響から」)。
関係する研究業績リスト
○島田弦「インドネシアにおける植民地支配と『近代経験』-インドネシア国家原理とアダット法研究」、『社会体制と法』第6号、2005年6 月、50-67頁。
○島田弦「インドネシア・アダット法研究における19世紀オランダ法学の影響-ファン・フォレンホーフェンのアダット法研究に関する考察」国際開発研究フォーラム38号、2009年3月、55-69頁。
○島田弦「インドネシア」鮎京正訓編『アジア法ガイドブック』名古屋大学出版会、2009年10月、130-155頁。
○島田弦・桑原尚子「イスラーム法」鮎京正訓編『アジア法ガイドブック』名古屋大学出版会、2009年10月、390-398頁。
○島田弦「開発における法の役割」大坪滋・木村宏恒・伊東早苗共編『国際開発学入門』勁草書房、2009年12月、205-219頁。
研究プロジェクト2:災害・平和構築と法整備支援-アチェ津波被害復興過程における法の役割
2004年12月26日にインド洋北東の断層を 震源におきた北スマトラ地震が引き起こした巨大津波は、沿岸地域に多大な被害をもたらしました。とりわけ、インドネシア・スマトラ島北端のアチェ州では人 口密集地である州都バンダアチェとその周辺部を津波が襲い、17万人以上の死亡者を出す激甚災害となりました。
被災地域では、右写真のように建物のほとんどが消失し、土地境界線も不明確になりました。また、もっとも被害を受けた沿岸の村落では、死亡率が90パー セント以上におよび一家全滅のケースもまれではなく、土地所有権の紛争は復興過程で大きな問題となりました。
それに加えて、数多くの津波孤児が発生し、彼等の権利を守るための効果的な後見制度や、相続制度をめぐる紛争解決も課題です。
アチェは歴史的・社会的な背景から慣習法の力が強く、上述のような問題に取り組む裁判所や国内外の法律NGOは、男女平等や土地の個人所有、村落の近代 化など現代的な法の要請と、現地社会が受け入れやすい法原理とを組み合わせる形での紛争解決制度に取り組んでいます。
この研究は、名古屋大学環境学研究科、国際開発研究科、工学研究科などが参加する文理融合型研究プロ ジェクトの一環として行っています。
関係する研究業績リスト
○島田弦「アチェ津波被害 復興における国家法・宗教法・慣習法の役割」、名古屋大学環境学研究科編『2004年北部スマトラ地震調査報告II』、2006年、132-136頁。
研究プロジェクト3:東ティモールにおける平和構築研究
東ティモールにおける武力紛争後の「法 の支配」回復に関する調査を行ってきました(2008年7月)。農村部での慣習法制度の調査、国際機関からの聞き取り調査、NGOへの聞き取り調査を行い ました。
また、東ティモール司法省職員に対する立法能力向上支援研修の可能性について調査を行ってきました(2008年9月)。東ティモール公務員の立 法能力・キャリアは極めて限られており、現在はポルトガルなどから派遣されたリーガル・アドバイザに強く依存しています。外国人のリーガル・アドバイザの 作成する草案の内容を検討したり、コメントできたりするような能力の向上及び部局内マニュアルの作成支援などが研修の目的となりそうです(第1回は 2009年3月1日~3月14日実施予定)。
研究プロジェクト4:汚職と法整備支援
関係する業績のリスト
○島田弦「改革期のインドネシアにおける汚職対策と法の支配」、孝忠延夫・鈴木賢編著『北東アジアにおける法治の現状と課題』成文堂、 2008、357-371頁。
その他の研究成果
○島田弦「インドネシアの環境紛争処理制度」公害等 調整委員会編『環境裁判・法執行に関するアジア・太平洋地域会議について』、2008年11月、193-203頁。(名古屋大学レポジトリへリン ク)
○島田弦「イン ドネシアの憲法事情」国立国会図書館調査及び立法考査局編『諸外国の憲法事情』2003年12月、63-84頁。(国立国会図書館サイトへリン ク)
○島田弦「イン ドネシア共和国1945年憲法(仮訳)(第1次ないし第4次改正を含む)」法務省法務総合研究所編『ICD NEWS第10号(2003年7月号)』。(法 務省サイトへリンク)