Monthly Archives: November 2017

エリザベス・コルバート、2015、6度目の大絶滅

結論は言うまでもなく、人類自身が、いま自らの手で生物種の大絶滅を引き起こしている、というものです。ただこの大絶命はかなり長大なタイムスパンで起きており、ナウマンゾウが絶滅したころ、数万年前から起きているようですね。この本の妙味は、ジャーナリスティックな現地リポートと、科学史的な洞察がうまく絡み合って、なぜある種は生き残るのに別の種は耐えられないのかを精緻に描いているところではないでしょうか。例えば、ある種の木々は、標高が高いところにすぐに広がることで急激な気温上昇に対応できるのに、別の種の木々はそうでない、といったような(第8章)。また本を読むだけでなく、現地に足を運んでみたいと思わせられます。

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本川達雄、2017、ウニはすごい バッタもすごい

『ゾウの時間、ネズミの時間』をご存知の方は、同じ著者の最新刊と言えば、本書の中身はイメージできるでしょうか。本書は最初の250頁くらいがサンゴ、昆虫、貝、ナマコ、ホヤの体の構造について触れられており、最後に少し四肢動物が出てきます。かなり専門的な内容なのに飽きさせないのは、説明がとてもうまいからか、著者が作詞作曲(!)した歌が各章の末尾に触れられているからか。本書を読んだ後、カンボジアでアリを食べた時に、「果たして人間の胃液は昆虫のキチン質を消化できるのだろうか」という疑問をもちました。記憶が正しければ、唐辛子を一緒に食べれば昆虫の体組織は消化できるはずです。

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波多野祐造、1994、物語 アイルランドの歴史

2002年8月に4週間、語学研修でダブリンに滞在してから、しばらくご無沙汰していたアイルランドについての新書。「欧州連合に賭ける”妖精の国”」という副題はミスリードな印象で、むしろ有史以来のアイルランドがいかにドロドロしていたかをバランスよく詳細に物語っています。文学・文化がいかにナショナリズムに結びついているかを克明に描いています。王や貴族、軍人が権力闘争に明け暮れるあたり、昨今流行っている『応仁の乱』を彷彿させます。高村薫『リヴィエラを撃て』(小説)やCramberriesのZombie(曲)を知っている人は、ぜひ背景知識として読んでみては。

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