社会開発

社会開発」がそもそも何を意味し、どのような分野を包摂するのかは、簡単なようで実はわかりにくい問題です。開発研究は、「社会開発」に限らず、現実に生成する開発の諸問題を分析し、政策立案に貢献するための政策研究です。従って、開発現場の動きに呼応しながら、分析概念や枠組も過去50年間で様々に変化してきました。「社会開発」についても同じことが言えます。
社会開発は、人間の経済活動と直結はしないものの、人間が人間として生きていくために必要な基本的ニーズを満たすことや、社会的公正を達成するための政策研究分野と一般には考えられます。社会開発分野で扱う具体的な研究課題には、ジェンダー、教育、保健・医療、貧困、参加型開発、紛争などがあります。こうした課題を研究するのは、社会学者でなければいけないというわけではありません。実際、多くの経済学者や政治学者が、社会開発分野の研究課題に取り組んでいます。
一方、人間の経済活動を含む開発の諸分野に、経済学的視点のみではなく、社会学や人類学の視点から分析を試みる研究アプローチは、開発社会学や開発人類学という学問領域で発達してきました。しかし、「社会開発」や「開発社会学」といった用語の使い分けは厳密なものではなく、双方の用語が同義で用いられることも珍しくありません。近年では、「社会開発」に期待されるものが、経済開発から抜け落ちる「ソフト」の部分を補う実践的側面に偏向している状況を改善するため、独自の理論的アプローチを構築する必要性が論じられています。

(参考)

  • 恩田守雄.2001.『開発社会学――理論と実践』ミネルヴァ書房
  • 西川潤編 .1997. 『社会開発――経済成長から人間中心型発展へ』有斐閣
  • Booth, David. 1994. Rethinking Social Development: Theory, Research & Practice. Harlow: Longman House.
  • Long, Norman. 2001. Development Sociology: Actor Perspectives. London: Routledge.